さよなら、建築計画概要書。

建築基準法

はじめに

建築計画概要書を廃止する省令案が、国土交通省から公表されました。現在、意見募集(パブリックコメント)が行われています。

建築計画概要書は、建物の計画の概要や配置図をまとめた書類で、誰でも役所で閲覧することができます。以前の記事でも触れたように、古い建物の履歴を調べるときには、欠かせない手がかりのひとつです。
→【関連記事:「建築計画概要書がない?台帳保存がない?」】

建築計画概要書がない?台帳保存がない?
シリーズ「知らんけど」 ~「建築計画概要書」と「建築確認台帳」の歴史から考える~はじめに先日、こんな相談を受けました。「所有しているビルの用途変更を検討していて、建築当時の記録を確認しようと役所に行きました。ところが『平成12年より前の建築…

その概要書がなくなる。これは実務にとって大きな変化です。ただ、案文を読んでみると、「なくなるもの」と「形を変えて残るもの」があることがわかります。今回はその整理と、実務上気をつけておきたい点をお話しします。

※本記事の内容は、令和8年10月時点で公表されている省令案に基づくものであり、筆者個人の理解と見解をまとめたものです。最終的な改正内容や運用については、公布される省令や国土交通省、各特定行政庁の情報をご確認ください。

改正の概要

今回の改正の背景には、行政手続のオンライン化があります。建築確認の電子申請の仕組みが整いつつある中で、「一度提出した情報を、再び提出させない」という、いわゆるワンスオンリーの考え方が取り入れられました。

これまで建築確認や定期報告では、申請書や報告書とは別に、その内容をまとめた概要書の提出が求められていました。しかし申請書は概要書の内容をおおむね含んでいて、申請者は同じ情報を二度提出している状態でした。この重複を解消するのが、今回の改正の主な目的です。

公布は令和8年10月、施行は令和10年4月1日の予定とされています。公布から施行まで1年以上期間が設けられてあるのは、各特定行政庁においてシステム改修等を予定しているためのようです。

廃止されるもの

廃止されるのは、建築計画概要書、築造計画概要書、定期調査報告概要書、定期検査報告概要書(昇降機、建築設備、防火設備、遊戯施設)、全体計画概要書の8種類です。

あわせて、特定行政庁が確認や検査などの処分の概要をまとめていた「処分等概要書」も廃止されます。また、許可や認定などの通知書にあった押印欄も削除されます。

形を変えて残るもの

一方で、閲覧の制度そのものがなくなるわけではありません。

建築基準法93条の2の閲覧制度は残り、閲覧の対象が「概要書」から「台帳の記載事項」と「申請書の一部」に置き換わります。

まず、確認申請書の記載事項が台帳に記載され、閲覧できるようになります。さらに、確認済証や検査済証の番号、交付年月日、交付者名、検査年月日なども、台帳の記載事項として明記されます。建物が確認や検査を受けているかどうかは、これまで以上に確かめやすくなるといえるかもしれません。

気になるのは、概要書の第三面にあった付近見取図と配置図です。これは確認申請書に新たに設けられる「第七面」に移り、閲覧の対象とされています。しかも、建物が滅失し、又は除却されるまで閲覧に供さなければならないとされています。

つまり、概要書という書類はなくなりますが、見ることのできる中身は、形を変えて残るということです。

なお、閲覧の対象から電話番号が外れること、定期調査で指摘された石綿の調査状況や耐震診断・改修の状況が閲覧の対象として明確に位置づけられることなども、あわせて改正されます。

気をつけたいのは、過去の概要書

ここからが、実務上いちばん気になる点です。

改正の案文では、施行日より前に提出された概要書などの閲覧について、「なお従前の例によることができる」とされています。

ここで注目したいのは、「従前の例による」ではなく、「従前の例によることができる」という書き方です。従前どおり過去の概要書を閲覧に供し続けるかどうかは、各特定行政庁の判断に委ねられているとも読めます。

以前の記事でお話ししたように、過去にも制度の改正や保存年限の経過を機に、概要書が廃棄された例があります。その時期に建てられた建物については、いまでも建築当時の記録を確認することが難しくなっています。

そして、過去の概要書の配置図は台帳の記載事項に含まれていないため、概要書そのものが失われれば、代わりになる公的な記録がありません。確認申請の図書は保存期間が15年とされているため、古い建物では概要書が唯一の公的な記録になっていることも少なくないのです。

今回の改正の目的は手続の合理化であって、過去の記録の閲覧を縮小することではないはずです。それでも運用次第では、自治体によって過去の概要書が残るところと残らないところが出てくる可能性があります。

一方で、自治体にとって、増え続ける図書の保存については切実な課題となっています。保存場所の確保や維持管理だけでも多額の費用が生じているはずです。

デジタル化と真偽性、保存義務・・・。建築計画概要書等の存廃だけでも難しい課題がいつくもあると考えさせられます。

まとめ

今回のポイントを整理します。

概要書は廃止されますが、閲覧の制度は残り、台帳と申請書の一部がその役割を引き継ぎます。配置図も、確認申請書の第七面として閲覧できる形で残ります。一方で、施行前に提出された過去の概要書がこれからも守られるかどうかは、今後の運用にかかっています。

一方で、確認申請書(図書及び資料)の保存について、建築主が十分注意して建築物の消滅等まで保存すべきであるとも考えます。既存建築物の調査において、確認申請図書の重要性は明らかです。これまでは、施行者から引き渡しされる「竣工図」を保存し、確認申請書を廃棄等しているケースが多くありました。建築主も、確認申請書の重要性を認識し、ストック活用時代における資産価値を守るという観点から、しっかり保存しておくことが重要だと思います。

既存建築物の履歴の確認や、法適合調査に関してお困りごとがあればお気軽にご相談ください。

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