建築計画概要書がない?台帳保存がない?なんで?

建築基準法

シリーズ「知らんけど」 ~「建築計画概要書」と「建築確認台帳」の歴史から考える~

はじめに

先日、こんな相談を受けました。

「所有しているビルの用途変更を検討していて、建築当時の記録を確認しようと役所に行きました。ところが『平成12年より前の建築計画概要書は保存していません』と言われてしまいました。台帳についても『この年より前のものはありません』と。役所に記録がないなんて、そんなことがあるのでしょうか。これは役所の怠慢ではないのですか」

古い建物の履歴を調べようとしたとき、この「記録がない」という壁にぶつかることは、実は珍しくありません。そして多くの方が「役所がちゃんと保管していないのはおかしい」と感じます。

しかし結論から言うと、これは必ずしも役所の怠慢ではありません。制度の成り立ちをたどると、「記録がないこともあり得る」ことが見えてきます。今回はこの図書保存の仕組みと、記録がないときにどう建物の履歴をたどるかをお話しします。

建築計画概要書と建築確認台帳は、別の制度

まず整理しておきたいのが、「建築計画概要書」と「建築確認台帳」は別の制度だということです。混同されがちですが、根拠となる条文も目的も異なります。

建築計画概要書は、建築基準法93条の2に基づく制度です。建築物の概要を一般の人が閲覧できるようにするための仕組みで、いわば情報公開の性格を持っています。

一方、建築確認台帳は、建築基準法12条に基づいて特定行政庁が整備する記録です。行政が建築物に関する情報を管理するための台帳です。

この2つは別の制度なので、保存や整備のルールも、その歴史も異なります。だからこそ「概要書はこの年より前がない」「台帳はまた別の年より前がない」というように、役所によって、また記録の種類によって「ない」時期が違ってくるのです。

「ない」ことは、実は珍しくない——図書保存制度の成り立ち

では、なぜ古い記録がないことがあるのか。制度の成り立ちをたどると理由が見えてきます。

建築計画概要書の場合

概要書を閲覧に供する制度自体は、昭和46年から存在しています。しかし意外なことに、当初は「いつまで保存しなければならないか」という保存期間の定めがありませんでした。

概要書について「当該建築物が滅失し、又は除却されるまで保存する」という趣旨が明確に定められたのは、平成11年5月の改正によってです。それ以前は保存期間の明確な法的根拠がなく、各特定行政庁の文書管理のルールに委ねられていた部分がありました。そのため、古い概要書が既に廃棄されているケースがあっても、それが直ちに違法だとは言い切れないのです。「平成12年より前はない」という現場の感覚は、おおむねこの平成11年の改正に対応しています。

建築確認台帳の場合——ここに興味深い歴史があります

台帳の整備を法律上明確に義務づけたのは、平成5年6月の改正です。それ以前は、台帳整備の明文の根拠がありませんでした。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。平成5年より前から、多くの特定行政庁は実際に確認台帳を整備し、閲覧にも応じていました。明文の義務がなかったのに、なぜ台帳は存在していたのでしょうか。

制度の歴史をさかのぼると、興味深い事実が見えてきます。国は昭和25年の建築基準法施行の頃から、通知を通じて各種の台帳整備を各行政庁に求めてきました。道路に関する台帳、壁面線の台帳、既存不適格建築物の台帳、定期報告の対象となる建築物の台帳などです。

ところが、これらの通知で整備が求められた台帳の中に、「建築確認そのものの履歴を残す台帳」は明確には位置づけられていませんでした。むしろ確認事務については「書類上の手続は簡素化に努めること」という方針すら示されていたほどです。記録を残す主眼は、統計の作成や定期報告の管理に置かれていて、確認処分の履歴保存そのものではなかったのです。

では、確認台帳はどこから来たのか。答えは、実務上の必要です。

建築主事が建築確認という処分を行えば、後日の問い合わせ、証明、違反建築の指導などのために、いつ・誰に・どの建物について確認したのかという記録がどうしても必要になります。法令や国の通知で義務づけられていたからではなく、確認事務を執行する各行政庁が、実務上の必要に迫られて自主的に台帳を整備してきた。その必要性に応える形で、台帳整備の実務が全国に定着していったと考えられます。

そして平成5年の法改正は、こうして実務として根づいていた台帳整備を、後追いで法律上の義務として明確に位置づけたものと理解できます。

つまり「古い台帳がない」ことがあるのは、台帳整備がもともと各行政庁の実務慣行として行われていて、統一的な保存の法的根拠が整うのが後になったからです。役所ごとに「特定行政庁になる前の台帳はない」「この年より前はない」と説明が分かれるのも、各行政庁がたどってきた沿革や記録の引き継ぎの事情がそれぞれ異なるためです。役所の怠慢というより、制度がそこまで整っていなかった時代の産物だと理解するのが実態に近いのです。

「記録がない」と言われたときに、できること

では、記録がないと言われたら、そこで終わりなのでしょうか。そんなことはありません。

建物の適法性を確認するうえで本当に知りたいのは、多くの場合「その建物がいつ建てられたか」ということと、「適法であるかどうか」という点です。

建築された時期がわかれば、当時どの法律が適用されていたかがわかります。その時点の基準に照らして建物を評価することができます。

概要書や台帳が残っていなくても、建築時期を推し量る手がかりは他にあります。たとえば登記簿を見れば、建物の登記がいつなされたかがわかります。過去の航空写真をたどれば、ある時点で建物が存在していたかどうかを確認できます。こうした複数の材料を突き合わせることで、おおよその建築時期を推測可能です。その時期の法律をもとに法適合の調査を進めていく、という方法も考えられます。

つまり「確認台帳がないから調べようがない」わけではなく、別の角度から建物の履歴に迫る道は残されているのです。

ただし、どの資料からどう建築時期を絞り込み、当時のどの規定に照らして評価するのか。ここには制度の沿革の理解と実務の経験が要ります。どの時代にどの記録が整備されていたのかを踏まえていなければ、そもそも「何を手がかりにできるか」の見当がつきません。「記録がない」と言われて諦めてしまう前に、まだ調べられる余地がないかを見極める。役所の窓口や各種の記録は、建物の過去を知るための大切な資料なのです。

まとめ

今回のポイントを整理します。

建築計画概要書と建築確認台帳は別の制度です。それぞれ保存・整備が法律上明確に義務づけられた時期が異なります。概要書は平成11年5月、台帳は平成5年6月です。とりわけ確認台帳は、もともと各行政庁が実務上の必要から自主的に整備してきたものです。後に法律で明文化されたという経緯があります。それ以前の記録が残っていないことは、必ずしも役所の怠慢ではありません。制度の沿革によるものと理解するのが実態に近いといえます。

そして「記録がない」と言われても、そこで終わりではありません。登記の時期や航空写真などから建築時期を推測し、その当時の法律をもとに法適合を確認していくといった方法も考えられます。大切なのは、どの記録から何を読み取り、どう組み合わせるかを知っていることです。

古い建物の履歴調査でお困りのときは、諦める前に一度、専門家にご相談いただければと思います。「ない」と言われた記録の周辺に、まだ手がかりが残っていることは少なくありません。

確認済証や検査済証の記録がない、とお困りの方はご相談ください。https://www.imknot.co.jp/contact.html

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