シリーズ「そうちゃうかな、知らんけど」

建築基準法

はじめに

先日、こんな相談を受けました。

「空き家を活用して民泊を始めたいと考えています。建築基準法上の用途は住宅のままでいいのですか。それともホテル・旅館になるのですか。簡易宿所ならホテル・旅館とは違いますよね?」

民泊に関する相談の中で、この質問は最も多いもののひとつです。そして「簡易宿所だからホテル・旅館とは別の扱いになる」という誤解も非常に多い。

結論から言うと、民泊の建築基準法上の用途は「どの法律に基づいて許可・届出を行うか」によって決まります。この選択がすべての出発点です。

なお、建築基準法に定義のない用途の判断については、フィットネスジムやサウナの記事でも解説しています。あわせてご覧ください。

【関連記事1】 フィットネスジムの用途変更についてhttps://www.imknot.co.jp/blog/?p=42

【関連記事2】 サウナの用途変更についてhttps://www.imknot.co.jp/blog/?p=72

民泊の用途判断は「どの法律で許可・届出するか」で決まる

民泊の建築基準法上の用途は、どの法律に基づいて許可・届出を行うかによって明確に分かれます。

旅館業法の許可を取得する場合

建築基準法上は「ホテル・旅館」として扱われます。ホテル・旅館は建築基準法別表第一に掲げられた特殊建築物に該当します。

住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出する場合

建築基準法上は「住宅」のままです。特殊建築物には該当しません。

同じ「民泊」という言葉であっても、法的な枠組みの違いによって建築基準法上の用途が全く異なります。これが混乱の出発点です。

「簡易宿所だからホテル・旅館とは違う」は間違い

民泊に関して最も多い誤解がこれです。

旅館業法には、ホテル営業・旅館営業・簡易宿所営業という区分があります。「簡易宿所だからホテル・旅館とは別の扱いになる」と思い込んでいる方が少なくありません。

しかし建築基準法上は、ホテル・旅館・簡易宿所いずれも同じ「ホテル・旅館」用途として扱われます。

簡易宿所は旅館業法上の区分です。建築基準法上の用途区分ではありません。旅館業法と建築基準法の区分の違いを混同してしまうことが、この誤解の原因です。

つまり、簡易宿所の許可を取得した場合でも、建築基準法上はホテル・旅館と同じ特殊建築物として扱われます。この点は明確に理解しておく必要があります。

「ホテル・旅館」になると何が変わるのか

旅館業法の許可を取得し、建築基準法上「ホテル・旅館」に該当した場合、住宅とは異なる規定が適用されます。主な影響は以下の通りです。

確認申請の要否

特殊建築物への用途変更として、床面積が200㎡を超える場合は確認申請が必要になります。

用途地域の制限

ホテル・旅館は建築できない用途地域があります。第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域などの住居系地域では制限されます。住宅なら建築できる場所であっても、ホテル・旅館としては認められないケースがあるのです。

適用される規定

防火・避難に関する規定が住宅より厳しくなります。内装制限の適用や避難設備の確保が求められることがあります。

住宅のままか、ホテル・旅館になるかで、手続き・コスト・出店可能エリアが大きく変わります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)なら住宅のまま

一方、住宅宿泊事業法に基づく届出であれば、建築基準法上は住宅のままです。

特殊建築物に該当しないため、用途変更の確認申請は不要です。住宅として建築できる用途地域であれば営業できるため、出店可能なエリアも広くなります。

ただし住宅宿泊事業法には年間180日以内という営業日数の制限があります。また自治体の条例でさらに日数や営業可能な区域が制限される場合もあります。

営業日数の制限がある代わりに、建築基準法上のハードルが低い。これが住宅宿泊事業法のルートの特徴です。

なお大阪では、国家戦略特別区域法に基づく特区民泊の制度もありましたが、現在は受付が一旦中止されています。

「200㎡以下のホテル・旅館」という第三のルート

近年の実務で増えているのが「200㎡以下の旅館業法ルート」です。

以前は旅館業法の許可基準が厳しく、ホテル等の許可を取ること自体がハードルになっていました。そのため営業日数に制限のある住宅宿泊事業法を選択するケースが多かったのです。

しかし近年、旅館業法の許可基準が緩和されたことにより、ホテル等の許可が以前よりも取りやすくなりました。これによって新たな選択肢が現実的になっています。

旅館業法の許可を取得し、床面積を200㎡以下に設定する。こうすれば営業日数の制限がなく、365日営業が可能であるにもかかわらず、用途変更の確認申請は不要になります。

営業日数制限なし、かつ確認申請も不要。この両方のメリットを得られるルートとして、200㎡以下の旅館業法ルートを選ぶケースが増えてきています。

ただし注意が必要なのは、確認申請が不要であっても建築基準法上の用途は「ホテル・旅館」になるという点です。

以前の記事で解説した通り、確認申請が不要でも建築基準法への適合確認義務はなくなりません。改修部分・既存部分の適合性確認と既存不適格の遡及有無の確認は、自主的に行う必要があります。

【関連記事3】 確認申請不要な場合の用途変更についてhttps://www.imknot.co.jp/blog/?p=64

計画段階で法的な枠組みを決めることが重要

民泊を始める際に最初に決めるべきは「どの法律に基づいて営業するか」です。

主な選択肢を整理します。

A. 住宅宿泊事業法(民泊新法)
建築基準法上は住宅のまま。確認申請不要。ただし年間180日の営業日数制限あり。

B. 旅館業法(200㎡超)
建築基準法上はホテル・旅館。確認申請が必要。営業日数制限なし。

C. 旅館業法(200㎡以下)
建築基準法上はホテル・旅館。確認申請は不要。営業日数制限なし。ただし法適合の自主確認が必要。

この選択によって、建築基準法上の用途・確認申請の要否・用途地域の制限・適用される規定がすべて決まります。

後から法的枠組みを変更すると、用途変更の確認申請や大規模な改修が必要になる場合があります。計画の初期段階で法的枠組みを選択した上で、特定行政庁に事前相談することが不可欠です。

まとめ

今回のポイントを整理します。

民泊の建築基準法上の用途は、どの法律で許可・届出するかで決まります。旅館業法の許可を取得すればホテル・旅館(簡易宿所も含む)、住宅宿泊事業法の届出であれば住宅のまま。「簡易宿所だからホテル・旅館とは別の扱い」というのは、旅館業法と建築基準法の区分を混同した誤解です。

近年は旅館業法の許可基準が緩和され、200㎡以下で確認申請不要かつ営業日数制限なしのルートが増えてきています。ただし確認申請が不要でも、建築基準法上の用途はホテル・旅館であり、法適合の自主確認は必要です。

どの法的枠組みを選ぶかが、すべての出発点です。計画の初期段階で専門家に相談することをお勧めします。

民泊の用途判断・法規チェックは、専門家にお気軽にご相談ください。https://www.imknot.co.jp/contact.html

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