シリーズ:「こうなんちゃう、知らんけど」

建築基準法

平置き駐輪場を機械式に替えたら「増築です」と言われた。~増築の定義と判断基準を解説します~

はじめに

先日、こんな相談を受けました。

「マンションの平置き駐輪場を機械式駐輪場に改修しようとしたところ、役所から『それは増築になります』と言われました。駐輪場の改修で増築になるとは思っていませんでした。なぜそうなるのでしょうか」

駐輪場を便利にしようとしただけなのに、増築扱いになる。直感的には納得しにくい話です。しかしこれは珍しいケースではありません。なぜこうなるのか。

建築基準法に「増築」の定義はない

まず大前提として知っておいていただきたいことがあります。

建築基準法には「増築」の定義規定が存在しません。

建築基準法2条には、建築行為の種類として新築・増築・改築・移転という分類が登場します。しかし「増築とは何か」を定めた条文はどこにもありません。

実務上の拠り所となっているのは「床面積を追加すること=増築」という解釈です。つまり、床面積が増加する行為が増築の基本的な考え方とされています。

定義がないから「これは増築ですか」という相談が絶えない。これが実務上の混乱の出発点です。

「床面積を追加(増加)する=増築」、しかし床面積には2種類ある

「床面積を追加(増加)すれば増築」という考え方は一見シンプルです。しかし実はここに落とし穴があります。

建築基準法上、床面積には大きく2種類の概念があります。

①壁の中心線で囲まれた「床面積」

建築物の各階の水平投影面積をもとに算定するものです。確認申請の規模判定や建築行為の判断に使われます。

②便宜上設定された「床面積」

こちらは取扱等で算定方法が定められた床面積のことです。今回のような機械式駐輪場などのように、通常の算定方法ではなく、算定方法が別途定められたものがいくつかあります。

この取扱が、今回の相談のポイントになります。

機械式駐輪場で生じる「算定上の床面積増加」という問題

平置き駐輪場を機械式駐輪場に改修した場合、床面積の算定はどうなるのでしょうか。

平置き駐輪場は実際の水平投影面積がそのまま床面積として算定されます。一方、機械式駐輪場については、床部分を明確に認識することが困難な部分については、駐輪台数に1.2㎡を乗じた数値を床面積として算入するという床面積算定上の取り扱いがあります。

ここで重要な問題が生じます。

実際の建築物の床は増えていないのに、算定上の床面積は増加するという状況が起きるのです。

平置きから機械式への改修では、物理的な床を新たに設けるわけではありません。しかし算定方法が変わることで、数字の上では床面積が増加したように扱われます。

これが今回の論点です。

「算定上の床面積が増加した」ことをもって増築と判断するのか。実際の床が増えていないのに、取扱上の算定方法によって増築扱いになるとすれば、それは合理的なのか。この問いに対して条文は明確な答えを示していません。だからこそ行政への事前確認が不可欠になります。

「増加」の判断——ある時点をどこに置くか

機械式駐輪場の事例ではありませんが、もうひとつの論点があります。

そもそも「増加した」とはどういう状態を指すのか、という点です。

増加とは、ある時点の状態から数量等が増えている状態を指します。つまり「増築かどうか」を判断するには、比較する起点をどこに置くかが重要なポイントになります。

たとえば、既存の床を撤去しながら同時に新たな床を設ける工事を行った場合はどうなるでしょうか。

撤去前の状態と工事完了後を比較すれば、床面積は増えていないように見えます。一方、撤去が完了した時点を起点にすれば、「撤去した部分に床を増築した」とも見ることができます。前者は撤去前を起点に、後者は撤去後を起点にしています。このように、どの時点を起点に置くかによって「増加した」かどうかの判断が変わり得るのです。

ただしこれも行政の取り扱いによるため、判断が変わることがあります。

これまでの実務経験上、撤去と新設の間に「時間的一体性」がある場合は、増築にあたらないと判断されることが多いです。これは私が実務上の整理として使っている造語ですが、要するに一連の計画として同時に行われるかどうかが鍵になるという意味です。

具体的な事例で説明します。

①既存の床を撤去して同時に階段を設けるケース

床の撤去と階段の設置を一体の工事として同時に行い、水平投影面積が同一である場合は、増築に該当しないと判断された事例。撤去と新設が時間的に一体であることがポイントです。

②既存の床を撤去してエレベーター・エスカレーターを設置するケース

こちらも撤去と設置を一体の工事として同時に行うことが条件です。なおエレベーターやエスカレーター自体の確認申請は別途必要になります。

まとめ

今回のポイントを整理します。

建築基準法に「増築」の定義はありません。床面積を追加することが増築の基本的な考え方ですが、床面積には「壁の中心線で囲まれたの床面積」と「便宜上設定された床面積」の2種類があり、機械式駐輪場のように実際の床は増えていないのに算定上の床面積が増加するケースがあります。

「増加したかどうか」の判断は比較する起点をどこに置くかによって変わり得ます。撤去と新設に時間的一体性がある場合は増築に該当しないと判断されることが多いですが、これも行政によって判断が異なるケースがあります。増築に該当しない場合でも法適合の確認は必要です。

「これは増築になりますか」という問いへの答えは条文を読むだけでは出ません。計画の初期段階で事前相談することが最も確実な対処法です。

増築・改修計画に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。https://www.imknot.co.jp/contact.html

コメント