一室だけの用途変更。なのにビル全体を調査?「床面積の合計」が鍵を握っています。
はじめに
先日、こんな相談を受けました。
「テナントビルの空き室で飲食店を始めようと思い、用途変更の事前相談に行きました。その部屋は以前も飲食店だったので手続きは簡単だと思っていたのですが、役所から『ビル全体の用途構成と面積を調べて資料を持ってくるように』と言われました。一室の話なのに、なぜビル全体を調べる必要があるのですか」
この疑問はもっともです。自分が借りる一室の話をしているのに、なぜビル全体を調べなければならないのか。直感的には納得しにくい話です。しかしこれには明確な理由があります。建築基準法における「床面積の合計」という考え方がその答えです。
なお、用途変更後の法規チェックについては第3回の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。https://www.imknot.co.jp/blog/?p=59
用途変更の判断は「ビル全体」で行われる?
まず結論をお伝えします。
用途変更の確認申請が必要かどうかの判断は、「その室単体の面積」ではなく、「建物全体における同用途に供する床面積の合計」になります。
建築基準法第87条(第6条準用)では、特殊建築物の用途に供する床面積の合計が200㎡を超える場合に用途変更の確認申請が必要と定められています。この「床面積の合計」という表現が重要です。
今回変更する一室だけの面積で200㎡を超えるかどうかを判断するのではなく、ビル内にすでに存在する同用途の部分と合わせた合計で判断するという考え方です。これが「ビル全体を調べてきてください」と言われる理由の本質です。
既存の同用途面積との「合算」が鍵になる
「床面積の合計」の判断において重要なのが、「すでに同じ用途として使われている部分」との合算です。
具体的な事例で説明します。
・10階建てテナントビル
・2階・3階にすでに飲食店が入居 (各80㎡・合計160㎡)
・今回4階(80㎡)を飲食店にしたい
この場合:
既存飲食店160㎡+新規80㎡=合計240㎡
合計が200㎡を超えるため、確認申請が必要になるという整理です。
「今回、用途変更する部分は80㎡なので申請は不要」と思っていても、ビル内の既存同用途面積との合算で確認申請が必要になる場合があります。これが役所から「ビル全体を調べてきてください」と言われる理由です。
なお、この合算の考え方は条文上に明文規定があるわけではなく、行政の解釈・運用によるものです。だからこそ特定行政庁によって判断が分かれるケースがあります。
調べておくべき「テナント用途」と「法適合性」
余談になりますが、この「床面積の合計」だけが既存部分を調べる理由ではありません。同じ飲食店の用途に供する部分だけでなく、物販店舗などの用途に供する部分の床面積についても知っておくべきです。
というのも、飲食店と物販店舗は、同じ特殊建築物のカテゴリー(法別表1(い)欄の(4)項)になります。ここで、床面積の合計の算定において、法別表1(い)欄の(4)項の用途に供する部分として、飲食店と物販店舗の床面積を合計するという場合もあります。
そのため、当該建築物内において、飲食店舗以外の特殊建築物の用途があるか、あればどの程度の規模であるかもポイントになる場合があります。
また、すべての部分が、適法な状態で維持管理されているとは限りません。検査済証の交付以降に改修や申請を伴わない用途の変更をした部分においての法適合性についても問われる場合があります。
まとめ
今回のポイントを整理します。
用途変更の確認申請の要否は、その室単体の面積ではなく、ビル内の同用途に供する床面積の合計で判断されます。既存テナントとの合算によって200㎡を超える場合は、確認申請が必要になります。
この合算の考え方は条文上の明文規定ではなく行政の解釈によるものであるため、特定行政庁によって判断が分かれるケースがあります。その他にも、申請以外の部分の床面積や未申請部分の法適合性というポイントもポイントになる場合があります。
「一室の変更だから簡単なはず」という思い込みが、思わぬ手続きの複雑化につながることがあります。計画の初期段階でビル全体の状況を整理した上で、特定行政庁に事前相談することが最も確実な対処法です。
用途変更の事前相談は、専門家にお気軽にご相談ください。


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